大自然で育った牛 飛騨牛
飛騨といわれてどの辺りかすぐにピンと来る方は旅行好きな方かもしれません。
かつて飛騨国と呼ばれていた岐阜県の北部一帯を指し、1995年に飛騨の白川郷が世界遺産に登録されたことで、現在は人気の観光スポットとなっています。
飛騨は一面の山で、まさに美しい日本の山村といった印象で、ここで取れる食べ物はさぞかしおいしいと期待させてくれるものがあります。
その飛騨の名物、大自然の産んだ飛騨牛をご紹介したいと思います。
実は最高クラスの飛騨牛
ブランド牛というと、神戸牛、松阪牛などが有名ですが、飛騨牛も負けてはいません。
和牛のオリンピックとも呼ばれる「全国和牛能力共進会」の第8回の総合評価部門と枝肉部門で最高位である名誉賞を受賞、第9回では枝肉部門で最優秀賞を受賞と、連続で受賞しています。
飛騨での本格的な畜産の歴史は戦後からです。
元々は農耕用に飼育していた和牛を、農作業の機械化に伴い、肉用牛に転向したのが始まりです。
歴史は長くはありませんが、生産者の熱意と研鑽は目を見張るものがあります。
伝説の牛「安福」
昭和56年に「安福」というオス牛が兵庫から岐阜県に導入されました。
この安福の子供は、どれも体格、肉質、脂肪交雑という肉用牛に求められる要素に優れていました。
この安福の導入により飛騨牛の品質は一気に上がります。
ある時の調査では安福の仔139頭のうち半分近くが、最高級の肉の指標である「A5」「B5」の肉質であったという驚異的な数字を残しています。
最終的に安福は13年の生涯で約4万頭もの仔を残しています。
死後、この功績を表彰して牛ながらに銅像が立てられています。
現在でもこの安福の顕彰は行われ、折々にテレビで特集番組が組まれたり、クローン牛としての再生が試みられています。
まさに、近代日本畜産に大きな影響を与えた牛といえるでしょう。
その安福の血を最も濃く受け継いでいるのが現在の飛騨牛たちです。
偽装事件と信頼回復の努力
こうして生産者の努力と安福の登場により品質を向上してきた飛騨牛ブランドですが、不幸な事件があり、一度その信用が失墜しています。
2000年代後半から各地で問題になった一連の牛肉偽装事件です。
飛騨でもまた、大手メーカーによる偽装が行われており、これは大きな痛手となりました。
ですが、ここまで努力を続けてきた飛騨の生産者たちはそれで終わりませんでした。
個体番号から肉質を確認できるシステムの確立や、頻繁な抜き打ち検査の実施など厳密なチェック体制を敷き、正しい情報をとどけることで安心して食べてもらえるよう信頼回復に努めたのです。
災いを転じて福となすという言葉がありますが、飛騨牛に関わる人々は苦境をバネに、安心して飛騨牛を食べられるシステムを作り上げたのです。
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