桑の葉の歴史
そもそも日本において桑の葉の歴史は大変古いものです。
その歴史を紐解いていきましょう。
かいこの餌として
桑は絹を取るためのかいこの餌となります。
絹の生産は弥生時代にはすでに伝えられ、それ以来、非常に重要な生産品として各地で作られてきました。
そのためその生産の元となる桑の木は各地で身近に植えられ、特に養蚕が盛んな地域では一面の桑畑も珍しくありませんでした。
くわばらくわばら
現在でもおまじないの言葉として「くわばらくわばら」と唱えますし、地図記号にも桑畑のマークがあります。
このように、人々にとって非常になじみの深い植物でした。
現在でこそ、桑はあまり見かけない植物ですが、これは戦後に海外産の絹や化学繊維に押されて絹の生産量が減ったためで、ごく近年までは非常に重要で一般的な植物でした。
漢方・薬草としての桑の葉
また、桑は薬草としても知られています。
中国の後漢時代に書かれた「神農本草経」という薬草に関する書物にその記述があります。
いわゆる漢方薬です。
漢方には上薬、中薬、下薬、とあり、それぞれ効能が強く副作用が少ない、効能がそれなりにあり副作用はそれなりに少ない、効能が少なく副作用が強い、とされています。
桑の葉はこのうちの中薬です。
漢方は上薬をメインとして、中薬、下薬を織り交ぜて処方されます。
桑の葉は単体としてはいわば漢方薬の中堅どころですが、上薬にあたるものは稀少な素材が多いため、中薬の中でも手に入りやすい桑は活躍の場が多い存在でしょう。
また、日本でも鎌倉時代に「長寿の薬」として記録があります。
漢方によると、葉、枝、実、根、それぞれに違った薬効があるとされています。
そのうちお茶になる桑の葉は、感冒などに効果があるとされてきました。
お茶としての桑の葉の歴史
お茶としての歴史もなかなかに古いものです。
現在、一般的にお茶に使われる植物は茶の木です。
日本にその茶の木が伝わったのは奈良時代とされていますが、その後一度廃れています。
再び隆盛したのは鎌倉時代、そして庶民にまで喫茶の習慣が広まったのは戦国以降から江戸時代にかけてと考えられています。
昔は身近なお茶
しかし、茶の木から取れる日本茶は庶民にとっては高級品でした。
そのため、庶民は身近にある木々の葉を利用し、お茶の代用としていました。
桑の葉もその一つです。
身近に葉を取るための木として存在し、薬としても知られている桑の葉をお茶に利用するのはごく当然のことだったでしょう。
つまり庶民に喫茶の習慣が広まった当初からある歴史ある存在です。
また、実際はそれ以前からも、薬の処方法として桑の葉を煎じて飲む事は行われました。
ある意味で茶の木によるお茶の歴史よりも古い飲み物であるわけです。
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