希少性の高い地鶏とその理由
全国各地に「地鶏」と呼ばれるブランド鶏が存在しますが、その中でも希少価値が高いもの、そしてそれがなぜ希少価値を持つのか、その理由をお伝えします。
1.希少価値を持つ地鶏
秋田の比内地鶏、薩摩の地鶏である薩摩鶏などは特に希少価値が高いとされています。
ほかにもいくつかの地鶏は、非常に生産量は少ない状態にあります。
和歌山県田辺市の龍神地鶏などは江戸時代以前から飼育されてきたという歴史があるものの、2012年の時点で61羽しか飼育されていないという状況なのです。
実は、ほとんどの地鶏においては希少価値があるといっていいのです。
それは、その維持の方法などに理由があります。
2.繁殖力の問題
薩摩鶏などの一部の鶏は、非常に繁殖力が弱いのです。
そのため、ブロイラーなどと交配して「薩摩地鶏」という名前で流通しています。
つまり、薩摩鶏と薩摩地鶏は厳密には違うのです。
薩摩鶏をそのまま流通しようと思ったら莫大な金額になりますし、その後の生産にも影響を及ぼしかねません。
生物の授業を少し思い出して頂ければわかるかもしれませんが、同じ性質を持つオスとメスの個体をかけあわせたからといって、全く同じ性質の子供が生まれるとは限らないのです。
わかりやすく言うと、血液型がB型同士の夫婦でも、O型の子供が生まれることはありますよね?
そういったところも含めて、純血の地鶏を繁殖させ続けるのには非常に困難が生じます。
これは牛や豚でも同じことが言えるのですが、一頭あたりの単価が低い鶏に関して純血を保つよう繁殖に時間とコストをかけることが出来るかというと、非常にむつかしいのです。
3.地域の問題と高齢化、後継者不足問題
秋田県の名産比内鶏は、鶏肉は全国各地で有名で、高級な料亭で食べられていますが、こちらは秋田県鹿角(かづの)地方で飼育された鶏が名乗れます。
(もちろん血統も正しくないといけません)。
しかしその地域にも日本全国の課題である「農家の高齢化」問題が押し寄せています。
後継者は残念ながら多くはありません。
都会に出てしまった地域の若者が、この地域に帰ってきて比内鶏の生産に携わってくれるか、、、
養鶏業もエサの高騰、鳥インフルエンザ対策などで経営は逼迫しています。
ブランド地鶏だからといって、農業で所得が保証されるわけではありません。
そのため多くの養鶏業が、後継者不足に悩まされています。
4.大規模化になりにくい
先の後継者不足に輪をかけるのが、その経営規模です。
鹿児島や宮崎のような大規模養鶏に比べ、地鶏の生産者は小規模が多いです。
しかしそれを統合して大規模にできるような体勢ではありません。
鶏舎が離れているからということもありますが、離れたところを統合して規模を拡大するには大きな投資も必要です。
場合によっては、近隣の住民の方が反対する場合もあります。
住民にとって臭を放つ畜産業は嫌われ者だったりします。
さらに言えば鶏は鳴き声を懸念されたりします。
規模を拡大できない、収益向上がしにくい、そのため後継者もなかなか見いだせない、という状態にあるのが現状です。
地鶏の今後の継承のためにも、多くの方にこの現状を理解した上で、それ相応の価格を払ってもらうこと、納得して食べてもらうことが重要でしょう。
名古屋コーチンのように、ある程度の規模を持つ生産者も現れてますし、そういう生産者側の動きとそれを支援する政策にも期待したいところです。
極めて希少な鶏「シャポン」
さらに極めて希少な鶏が存在します。
その名もシャポンという鶏です。
シャポンとは、雄鶏を去勢し、地鶏以上の飼育期間を実現し、雄としての性成熟を迎えた鶏です。
通常の鶏の孵化からの出荷は2か月、地鶏は3ヶ月~6か月です。
そしてシャポンはなんと8ヶ月も飼育します。
フランスでのシャポンは有名ですが、希少かつ高価なので、日本にはあまり入ってきません。
しかしヨーロッパでは、出荷ピークのクリスマスでは数か月前にシャポンの購入予約が取れなくなるほど人気です。
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